ここ一週間でこんなにおもしろくいい映画に出会えたのが奇跡だ。

映画太秦ライムライトを見ました。
日本映画主演男優賞は、誰が何と言おうと、福本清三で決まり!!!!
福本清三のセリフをきちんと聴いたのは初めてかもしれない。
昔の東映映画で、その顔はよく見かけたが、ほとんどがセリフのない役だった。
かつての宇野重吉に似た軽やかで飄々としたしゃべり方だった。
ふた昔前までは時代劇の製作で隆盛を誇った京都・太秦の撮影所が舞台。
まあ、東映のことだ。
主人公の香美山清一(福本清三)は数多くの時代劇で斬られ死体となって転がる人生を続けてきた。
若くして最愛の妻を失くし、爾来質素な夕食をひとりで食べる人生だった。
時代劇の衰退とともに、数多くいた斬られ役の俳優たちがひとり、ふたりと去っていく。
彼は撮影所に作られたテーマパークで、わずかばかりの観客たちの前で、アトラクションの殺陣を演じる日々であった。
しかし、不遇の中であっても彼は夜の撮影所の片隅でひとり黙々と殺陣の鍛錬を怠らない。
偶然、その場を見た女優志願の少女・伊賀さつき(山本千尋、好演)が彼のもとにやってきた。
「殺陣を教えて欲しい」その日から、ふたりの稽古が始まった。
その甲斐あって、少女は大きなチャンスを掴み、成功の階段を登っていく。
いっぽうの香美山は静かに太秦に別れを告げる。
月日が流れた。
今は人気女優となったさつきの懇願もあって、久々に作られる時代劇映画に香美山が出演することになる。
ところが、長年の刀を振り回す殺陣演技のために、彼の肘は潰れていた。
それでも、香美山は気力を振り絞り最後の花道に向かっていく。
福本清三がヒーロー役の松方弘樹に向かって「怖気づいたか?」と挑発してからなだれ込む、ラストのチャンバラシーンが見どころだ。
年老いた自分の処遇を巡って、仕事仲間の意見が対立している。そのやりとりを廊下の陰で聞いてしまった香美山のやるせなさ。
老いのためか、夕焼け中で無邪気にチャンバラごっこをしてた子ども時代の幻想を追いかけてしまうシーン。
「いい役者になったね」と、憧れだったお姫様女優(萬田久子)から声をかけてもらうシーン。
年のせいか、身につまされる。
何度も肩が震えた。
夕焼けをバックに香美山とさつきが殺陣の稽古を繰り広げるシーンが美しい。
そう、とてもベタな話だ。
しかしだ、どんなにベタであっても、本作には映画の神様が確かに微笑んでいた。